第3章 私はジュリエット
空は駿からの電話が切れたあと、
何も言わずに家に帰った。
暗いダイニングの電気をつけ、
私服に着替えて冷蔵庫にある材料をとり、
適当に料理を作る。
「いただきます。」
空はひとりで呟くと、
黙々と食べ始めた。
部屋に響くのは、お茶碗がカチャっとなる音だけ。
「今日の飯もうまいな」
そんな声がしていた隣の席は、
誰も座っていなかった。
「…。」
空は、ぐわっと涙がこみ上げてくる感じを憶える。
そしてすぐに、冷たい涙をご飯の上にこぼしていた。
もう、駿は私なんか見ていない。
もう、好きな人を見つけたからだ
そりゃあ、小さい頃の約束なんて
覚えてるわけもないだろうな。
だけど。
空は、どうにもできないその涙を
流したまま、ひとり、大声で泣きだした。
「うああぁぁぁあぁっっ!!!!!!!」
泣き声は、部屋中に響き渡る。
空は、ただただ、ずっと泣いた。
今までの思い出も、
駿のことも
四人で一緒に遊んでいたことも
ご飯を食べ合っていたことも
笑いあったことも
小さい頃の 冒険と約束も
全部。 全部。
空は、涙に溶かして流し続けた。