第3章 私はジュリエット
やがては涙も枯れ果てた。
頬は涙のあとがかさつき、
目元は赤く、腫れていた。
どれくらい泣いただろう。
どれほど、悲しみを流したのだろう。
そんなことをしても、
空の駿への感情には、
なにも変化がなかった。
ただ、悲しくて。
ただ、悔しくて
ただ、恋しくて
空はいつの間にか自分の部屋へ走り、
机の引き出しの中からカッターを取り出していた。
なぜそうしたのかわからない。
全てを忘れたくて、
夢中で切りつけたのだ。
痛みも、苦しみも、
なにも感じなかった。
もう、私は壊れているのかもしれない。
そう、思うこともあった。
この空っぽになった心に残っているのは、
悲しみと悔しみだけ。
やがてそれは、
咲輝に対する敵意に発展していた。
「どうして…こんなになっちゃったんだろう。」
空は、血が流れる自分の腕をみながら呟いた。