第3章 私はジュリエット
帰り道でも、二人は空のことなど
いないかのように話に花を咲かせていた。
駿は自分の趣味や面白い話などを
淡々と咲輝にやや早口で語りかける。
その話を聞いて、手を口元にあて、
「フフッ」と上品で可愛げに笑う咲輝。
駿はその笑顔をみてさらに嬉しくなったみたいだった。
―――――――――どうして…?
空は一旦立ち止まった。
―――――――――どうして駿は咲輝を好きになったの?
二人はそのまま遠ざかっていく。
空は、足を進める気にはなれなかった。
――――――――どうして・・・
空はまた胸が締め付けられる。
さっきより何倍も苦しいものだった。
咲輝は誰に恋をしてもいい。
駿にだって、幸せになってもらいたい。
だけど…だけど…
私の恋は、こんな簡単に崩れてしまうものだったの?
神様、どうして…
「どうして…私達の約束を破らせたの…?」
あの日の約束。
それは今朝までずっと守られていた。
なのに。なのに…。
こんな簡単に
壊されてしまうものだったの・・・・?