第3章 私はジュリエット
帰りの時間。
空は席をたって駿に「帰ろう」と言った。
ところが、いつものように、
あのフニャっとした笑顔で
「おお、帰るか。」
と当たり前のようにいう彼の姿は何処にもなかった。
見るからに真剣な表情をして、
ばっと席を立ち、
「ごめん。先帰って。」
と、なんとも冷たく空に答えると、
咲輝の方へ歩いて行ってしまった。
空はそんな駿の背中を「まって」と追いかける。
空は、駿の行動を観察することにしたのだ。
駿は、咲輝の横にいそいそと立つと、
「さっきは廊下でごめんな?」と謝った。
咲輝は駿に気づいて、フルフルと首を横に振る。
「そんなっ あれは私が悪いんです!!」
と、自分から謝った。
そして、二人は何かのテレビなどの話で
共感したらしく、楽しそうに笑い合っている。
空は、そんな二人の後ろで、
トボトボと帰っていた。