第3章 夏休みに入って
汽車は各駅に止まり、続々と生徒が降りて行った。そしてケンタウロスも目的の駅に着くと鞄を手にして汽車を後にした。改札口を出ると両親と妹が出迎えてくれた。
「お兄ちゃん。手紙読んだよ。」
妹が嬉しそうに届いた手紙を見せてくれたのでケンタウロスはにっこり笑った。
「寂しくなかったか?」
「ううん。大丈夫だったよ。」
妹はそう言ったが後で父に”あの子は泣いていた”と聞かされ、やっぱりと思った。
駅を出て車に乗り込むと妹はケンタウロスに学校でのあれこれを聞いてきた。
「ねえ、友達はできた?」
「できたよ。」
「何人くらい?」
そんな話が暫く続いた。
家に着いて車から降りると妹が”お兄ちゃん、早く来てよ”と急かした。
「今行くよ。」
ケンタウロスは車から荷物を降ろして久しぶりの家に入って行った。廊下を歩きリビングに入るとテーブルの上のパンフレットが目に入った。
「これ?どうしたんだ?」
ケンタウロスが母に聞くと母はパンフレットを見せてニッコリした。
「みんなで水族館でも行こうと思ったのよ。ケンタウロスがせっかくの夏休みだし。それと、私達も色々考えたんだけどね。あなたとの距離がまだ縮まってない気がしてね、少しでも取り戻せないかなって。娘も楽しみにしていたからね。いいわよね?」
母の言葉にケンタウロスは頷いた。
「じゃあ、明日水族館に出かけるぞ!」
「わーい。」
妹はケンタウロスが来るのをずっと待っていたのですごく楽しみにしていたらしい。そして、この日はケンタウロスは荷物の整理をして妹と沢山遊んであげた。
「お兄ちゃんが次帰ってくるのはいつ?」
妹がケンタウロスに不安そうに聞いた。
「今度の春かな?冬は忙しいから学校にいると思うよ。」
「え~来年まで待てないよ。」
妹はダダをこねたが、学校の決まりだからとケンタウロスは肩をすくめた。
夕食時も妹はケンタウロスに家での事を話していた。この日、妹はしゃべりっぱなしだった。そして疲れたのか妹は8時に就寝した。妹が寝たあとはケンタウロスはお風呂に入ったり、両親と話したりして就寝した。両親と話しているとき父が”せっかくの夏休みだしあれこれやることが沢山あるな”と笑って語っていた。