第1章 出発~新たな出会い~
翌日の朝、彼はベッドから飛び起きて身支度をすると急いで家を出た。朝食は時間がない為、汽車の中で済ませることにした。
「さようなら、偽物の両親。そしてごめんね妹。学校に着いたら手紙を書くから待ってろよ。」
バタン。
タクシーで向かい、駅に着くと彼は昨日の手紙を読みながら歩いていった。
すると誰かとぶつかり手紙から目を離した。
「ごめんなさい。怪我はない?えっと僕はケンタウロス。」
「怪我はないわ。私はウンディーネよろしくね。」
ウンディーネが彼を見るなりくすりと笑ったので何がおかしいのか彼は聞いた。
「馬人間って本当にいるのね。」
「僕はケンタウロスだ!!」
「同じことでしょう?」
そんなやり取りをしばらくしていると彼は急いでいることに気がついた。
「僕は24番線に乗るから急がないと。」
「あら、私も一緒の汽車に乗るの。行きましょう。」
そして2人は頷き合い、肩を並べて駅の中を歩いた。
「あそこが24番線よ。」
彼女が遠くを指をさした先には壊れた階段があり、立ち入り禁止のマークが貼ってあったのでケンタウロスはひどく驚いた。
「どうやって?通るんだ?」
彼が不思議そうに言うと彼女はウィンクして彼の手を取った。
「2人で手を取り合って目を瞑るのよ。」
彼は言われるがままに目を瞑った。すると呪文が聞こえてきて・・・。いつに間にかドサッとコンクリートの床に2人は倒れ込んだ。
「やったわ。24番線に着いたようね。行きましょう。」
2人が乗り込んだと同時にドアが閉まり汽車は発車した。汽車の中では発車のアナウンスが流れていた。
「うわ~。あと5分しかなかったなんて危なかったな。」
彼が時計を見て驚いているのを無視して彼女は席を探し始めた。すると、どこからか2人を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい。こっちの席は空いてるよ。」
2人が声の方へ向かうと1人の少年が席に座っていた。
「やあ、僕の名前はディオニューソス。ディオとでも呼んでよ。」
2人はこの席しか空いていないことに気づきそこに座った。
「よろしく。」
2人も少年と挨拶を交わした。そして汽車の中で朝食を取りながら3人は話に花を咲かせた。
しかし2人はこのディオ少年がのちの若いゼウスになることをこの時はまだ知らなかったのである。