第6章 お前を守るのは(前編) @ 国見英×β
帰り道、遙がふと呟く。
『英…さっき、彼女って言ったよね…?』
「うん、撒くのに効くかなって思って。」
『…わたしは、ほんとに英が好きだよ。ほんとに英が恋人になってほしいって思ってる…だから…
「遙。」
国見の、いつもより低い、でもいつもより優しい、そんな声で、名前を呼ばれた。
「…お前、番まだなんだろ?俺はαじゃないから、遙とずっと一緒には居られないよ。」
『そうだけど…番なんて要らないから…英がいてくれたらそれで…。』
「番って、恋人以上に繋がりが深いんだろ。俺みたいなβよりさ、及川さんとか影山みたいなα見つけて、番になればいいじゃん。」
国見は何故か笑っていた。
遙は目に涙を帯びて、国見を見つめる。
『やだ…英がいないと嫌…。』
「…俺は、番が出来るまでは、ちゃんと遙のそばにいる。約束するから。」
"番が出来るまでは"
その言葉が、妙に遙の心に深く刺さった。