[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第11章 草葉の陰
「集合地獄の基本的な刑罰はわかりますね?」
「私みたいな美女が亡者を誘惑し、その誘いに乗った亡者を罰する。上げて落とす地獄だよねえ?」
自分を美女だなんて思う事は特別無かったので、冗談でもそう言うとクックッと笑いが漏れ出てしまう。
さあ、早くツッコミを入れて頂戴な。
なんて私の思惑とは裏腹に、鬼灯はそのまま普段通りの表情で私を見る。
「ええ、そうです。その刑罰ですが、男獄卒が襲ってくる場合もありますし、この葉が襲う場合もあるのです」
「え、あ、うん。ありが・・とう?」
動物達はなんとなく冗談だとわかっていたようで、その分だけ場の空気が淀む。
私はと言うと、思っていた反応が返って来ず、ポカンと間抜けな返答をしてしまった。
特に深入りもせず、ただ肯定するだなんてボケ殺しもいいところだよ。
通ってもいない関西人の血が沸き立ったので、また機会があればリベンジしようととりあえずその場は黙った。
鬼灯はそんな私の思惑に気付かないのか、完全にスルーしてその葉に軽く触れる。
すると葉はみるみる内に鋭利な刃物に変化してしまった。
「この一見、笹や百合の葉に似た葉は刀葉樹(とうようじゅ)。集合地獄名物、鋭い刃の木です。美女が木の上で誘い、登ると葉が刃になります。やっとこさ登り切ると、美女は下にいる…の繰り返しです。」
今まで様々な地獄植物があったが、それらの説明をすらすらと行う鬼灯に感心の目を向けるシロ。
「鬼灯様は植物にも詳しいね!」
「地獄で呵責を担う植物にだけ詳しいんですよ」
「いやいや、そうだとしても私なんかよりずっと詳しくて本当に見直しちゃうよお」
「どうぞ。珀訪はもっと私を褒めていいんですよ。なんなら惚れ直しちゃったわーとかなんとか言ってこの場で押し倒してくださっても構いませんが」
サラリと大胆な発言をする鬼灯に「ぐっ…!?」と言葉が押し込められたように出てこない。
3匹は観察するように、しかし空気を読んでるのか黙っている。
鬼灯は私の方へと身体を寄せ、手を掴んだ。