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[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]

第10章 小話:帰り道


そこには真面目そうな顔をした鬼灯が居た。
歩くスピードは普段よりほんの少し遅いけれど、ペースを乱さずにまだ真直ぐ続くこの道を、2人で手を繋いで仲睦まじく歩いている。


「そろそろ、子供を作ってもいいんじゃないですかね。どう思いますか?」

「そ、それは…」


ぎゅうううと手を強く握りそうになる。
あまり強く握ると痛がるだろう。
ぐっと我慢して前を向き、俯いたまま、小さく私はつぶやいた。


「……悪くないと、思うよ」

「きっと可愛い子が産まれますね。今夜はちょっと頑張りますか」

「だからッ ここッ 外ォオオオ!!!!!」


私はもう耐えられなかった。
鬼灯の手を振り切って、全力疾走した。
残された鬼灯など知らぬ。
私はとにかく、噂好きそうなおばちゃんたちの視線から逃げたかった。

絶対全部聞こえてる。


---


残された鬼灯は行く場所を失った手を下ろし、ふむとうなづいた。


「(やはり、女性は多少羞恥心のある方が可愛げがあっていいな)」


1人で帰路に着くことは、最近ではあまり少なくない。
鬼灯はわざとからかっているのだ。
まるで生娘のように慌てる珀訪が物珍しく、話を過剰に盛って聞かせると、羞恥に赤面する珀訪が見られるので内心では喜んでいた。

それに、白澤が手を繋いだり肩を組んだりしたってヘラヘラとしている珀訪が、鬼灯のたった一言や一動程度でこうまでして慌てるのだ。

ちょっかいをかけずにどうすると言うのか。


「(そうだ、近い内に桃源郷へ珀訪を連れて行こう)」


あのスケコマシが泣いて悔しがることであろう。
想像するだけで面白い。

鬼灯はあれこれ考え事をしながら、珀訪が待つであろう閻魔殿へ続く帰路をたどった。


小話終幕
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