[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第10章 小話:帰り道
鬼灯は軽く首を傾げる。
くそ、かわいい。
「ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ小僧!」
「…また変な事、考えてるでしょう」
「ギギギ…!!」
羞恥が爆発している。
もうなんか悔しい。
何この子、ほんの数百年前までは「珀訪さん、お菓子をいただきました。ご一緒にいかがですか?」なんてクリクリの目で見上げてくれていたのに。
今ではすっかり私を見下ろし、手玉にとってしまう。
惚れた弱みとはなんだったのか。
私がすっかり弱みを握られているこの状況を鑑みると、もうどうしたものか。
「まあ、いいじゃないですか。たまには」
前を向いて私を引っ張って歩き出す。
「たまには私だって誰かに自慢したくなるんですよ」
「自慢たって、そんなの白澤とか大王とかお香ちゃんとか、その辺で好きにしたらいいじゃんかっ」
わぁわぁと騒がしく、特に怒っている訳ではないのだけれど、引っ込みがつかなくなって騒いでしまう。
周囲の人影は少ないが、遠巻きにチラリと通り過ぎる人に見られてしまう。
それに気付き、少し声のトーンを落とす。
同時になんとなく落ち着きを取り戻せた。
鬼灯は相反してそのままの声で普通に話してくる。
「ええ、その辺りの方には既に自慢し尽くしましたし、毎日のようにしていますよ」
「や、やぁっ!!?(やめろォ!!マジか!?)」
「ですので、たまには珀訪の良さをまだ知らない層にも話してみたいと思ったんですけど、止めました」
止めて大正解だよ!
子供に何を話そうとしてたんだと、しかも毎日のように皆に私の何を自慢すると言うのか。
もう可愛くない。コイツ全然可愛くないよ、クチを縫い付けてやろうかと思うほど、焦燥感に苛まれる。
「んぐぐぐぐ…」
「あまりヘタに自慢すると、変な虫が寄って来ないか心配になりますし、老いた私の代わりと、今日会った子供達の1人が現れでもしたら困りますからね」
「じゃあ、いっぱい長生きしてよ。私より長生きしたらいいじゃないか」
「努力はしてみますけど、あまり期待はしないでくださいね。それより…」
なんだ。と顔を見上げなおす。