[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第10章 小話:帰り道
私達は薄暗い地獄の道を2人で並んで歩く。
この地獄では天気などほぼ無く、蒸し暑く、異臭さえある。
けれど、こんな場所でも 鬼灯さえ隣に居れば私は程々に満足である。
「ねえ、少し、緊張したねえ」
「ええ、大勢の子供の将来に関わるのかと思うと、多少の責任感のようなものは感じますね。だから、あまり変な事は言わないようにしましたよ」
「変なこと? 鬼灯のやることなすこと、ぶっ飛んでて変なのかそうじゃないのか、よくわかんなくなってきちゃったよお」
ケラケラと口元を手で隠しつつ笑った。
そんな私を鬼灯は見て、つられたのか少し、ほんの少しだけ柔らかい表情を見せてくれる。
ずっとそんな風なら、かわいいのに。
なんて事を考えていたら、ふいに鬼灯が手を握ってくる。
「へぇっ!?ホオズキサン、ココソトダヨ!!?」
ひぇえ~と素っ頓狂な声が出てしまう。
彼と心も身体も重ねるようになり、外で気軽に手を繋いだりしなくなった。
それは、私自身の羞恥心のようなものが刺激されることと、他者からの注目を浴びる落ち着かなさ、女性陣の悪意の篭った視線、その他、諸々がどうにも自身の心拍数を上げてしまう為、自然と控えるようになったのだけれども…。
決して嫌な訳ではない。
どちらかと言うと、こうやって体温を、ぬくもりを感じるとそれなりに心踊るものもある。
こうして唐突に手を掴まれた為、私の頭はいつかのようにカーッと熱くなり、声が裏返り、言葉が上手く出てこなくなる。
でも黙るに黙れず、ワタワタと手を握り返してしまう。
恥ずかしいなら離してしまえば良いのだが、瞬間湯沸かし器よろしく。
テンパって変な動きをしてしまった。
後で考えると、こっちの行動の方が恥ずかしいのだが、沸騰した脳みそはそれを理解できない。
「こうやってたまに手でも繋ぐと、普段余り見られない珀訪が見られたりして、夫としては役得なんですよね。そういう自慢をしてみたかったんですけど」
「だぁっ!!!(ダメ!!)」
手を繋いだまま、グッと力を入れ、鬼灯の方を睨んで威嚇する。
少しばかり身長差があるので、見上げることになるのだが。
「ですよね」
なんとなく、意図は伝わったらしい。
本能だ!野生だ!気迫で勝つのだ!!
「わぁっ!!!(意味ナシ)」
「ちょっと何言ってるのかわかんないです」