[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第9章 鉄を熱いうちに打つのは大人
子供とはいえ、人前で演説なんて上手く出来ればいいけれど。
学校の前に着き、チラリと横を見遣ると、鬼灯と目が合った。
「おかしくない?大丈夫?」
「…いつも通り、とても綺麗だから安心なさい」
「えっへっへえ~、鬼灯もいつも通り男前だよお」
今まで緊張していた私の表情は、鬼灯の一言により破綻する。
「さあ、行きましょうか」
「うん!」
流石にいつでもどこでも手を繋いだりなどとはいかないので、甘えてしまわないように気を引き締めなおした。
門をくぐり、靴箱の並ぶ入り口に着くと随分老いた鬼が待っていた。
向かい合うと、鬼灯がまず深々とお辞儀をして挨拶を交わす。
「こんにちは、鬼灯です。こちらは私の家内の珀訪です。」
「こんにちは、珀訪です。」
「どうも、副校長の鬼蓮です。本日は講演会にお越し頂き誠に…」
「いえいえ」
「こちらこそ」
日本特有の謙遜のし合いであろう。
あまりやると頭を上げるタイミングを失いそうなので、いつもかしこまった場所での挨拶は少し億劫な気持ちになる。
そこで先にクチを開いたのは鬼蓮副校長先生だった。
「え~、この度の講演会は5・6限を使って高学年の子を対象に行います。是非、ためになる話をお願いします。」
「ためになる話ですか…」
鬼蓮の案内で私達は内履きに履き替え、校内へと上がる。
「ええ、どれだけ勉強したら鬼灯様のように立派になられるか、どうしたら珀訪様のようにおおらかで居られるか…など」
おおらかねえ。世間ではそのように私は見られているのか。
全ては鬼灯の計らいにより、私に都合の悪そうな事はメディアには一切流れない為"おおらか”などという、オブラートに包まれた私がメジャーなのであろう。
私も随分有名になったものだなあと、複雑な心境を感じた。