[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第6章 この線路は続くのか:第四期
「何の用だよ。納期はまだ先だろ?」
「今日は迎えに来たんですよ。」
「え~?僕、男とデートする趣味はないんだけどなあ」
「…チッ、狸が」
桃太郎は山へ芝刈りに、白澤は店番をしていた。
そこへ鬼灯がまだ早朝にも関わらず、殺気を隠し、やって来た。
店内に入ると、後ろ手に鍵を閉め、仁王立ちで白澤と見合う。
「珀訪が此処に居るのは見当がついてるんですよ」
「珀訪ちゃんが?なんだよ、もう帰ってきてたんなら早く言えよな」
ヘラヘラ知らないフリをして白澤は続けた。
「お前が何考えてんのかわかんないけど、営業妨害だし鍵開けてさっさと帰ってくんない?」
「おい、スケコマシの害獣の癖していつまでも調子にのるなよ」
鬼灯は白澤の方へ歩み寄り、無理やり首を締め上げる。
白澤は首を掴むその手を引き剥がそうと鬼灯の手を引っかいた。
不死とは言え、苦しいものは苦しい。
「ぐっ…!!やめ、何のことかわかんないって…言ってる…だろ!」
「…」
「なんと、か…言え…ッ!」
鬼灯の手は必死に抗う白澤の爪によりどんどんと血が滲み始めた。
足をばたつかせ、足が当たる。
それでも締める力を緩めず、更に力を込めてゆく。
「可笑しいでしょう?私がこんなにもアレに入れあげているなんて、さぞ滑稽でしょうね。」
「がっ…ぐ…離せッ」
白澤は耳がキーンと鳴り、鬼灯の声が遠くなり始めていた。
首から上と身体の神経が別物のような、頭だけが熱を発するような、逆に冷めるような気持ちがした。
「ですが珀訪には私が必要なんですよ。それと同じく、私にも珀訪が必要なんです。これ以上ガタガタ抜かすようなら、返すまで何度だって殺しに来てやる」
突然、鬼灯の手は白澤の首を離した。
殆ど宙に浮いていた事と、酸欠による緊張で足が踏ん張れずその場に尻餅をつく。
ゼエゼエと喘息のような呼吸音を鳴らし、焦点の定まりの悪い目で鬼灯を憎憎しげに睨んだ。