[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第5章 仙桃の花の香り:第三期
部屋の様子を観察し、手紙の1つでもあれば信じるのにと探していた。
だがそれらしいものは見つからない。
「チッ、あの朴念仁め…ん?なんだこれ」
それは箱だった。
見覚えのある箱、でも中身はない。
「これ、僕があげた髪飾りの」
少なくとも、髪飾りは持っているんだろう。
この部屋には珀訪の着物が沢山残っている。
残り香も…
「おかしいな」
もう数ヶ月経過しているのにどうしてここには珀訪の残り香なんてものを感じるのか?
うっすら桃のような香りがする。
彼女は香水を使うような人じゃないし、化粧も控えめなタイプだ。
白澤は匂いの元を探す
すると静かな部屋の奥から物音が聞こえた。
驚いて扉を少し開けたまま、部屋の外へ飛び出した。
「…」
壁にあった小さな穴の周囲がベコリと凹み、引き戸のようにスライドした。
隠し扉か、小賢しい奴。
出てきた人物は鬼灯。
鬼灯は隠し扉を綺麗に閉じると、凹んだ穴に鍵のようなものを差し込んで平らにした。
あの穴に鍵を差し込むと、取っ手が出来るように設計されているのだろう。
鍵を横の引き出しに仕舞い、こちらへと向かって来たので、慌て転がるように帰る。
「(今はダメだ、作戦を考えないと。あの鬼の事だ、真正面からいったりしたら普通にブチ切れて何をするかわかったもんじゃないよ)」