[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第5章 仙桃の花の香り:第三期
「あれからもう何日経った?」
2人の逢瀬は主に部屋の中なので、することもなく私はベッドに転がっている。
鬼灯は机に向かい、なにかしらの仕事をしている事が多かった。
「そうですねえ、ざっと2ヶ月程でしょうか」
「60日、8週間、2ヶ月。たいしたことないなあ、ここに居ると日付感覚がおかしくなっちゃうからもっと経っていると思ったよ」
「貴女は日付感覚がなくなってもそう困らないのではありませんか」
「ははっ、違いないね」
「存在さえしてくれれば良いのです」
「まさに私のアイデンティティ!何処で何をしようと、私が存在することが存在理由である」
鬼灯は笑わなくなったが、私は逆に以前よりおふざけが増えた。
「また、あの害獣が来ましたよ」
「白澤が?飽きないねえ」
監禁生活2週目にして白澤の耳にも私が放浪の旅へ出たという話は伝わったようで、鬼灯に会いに来たそうだ。
「あの鬼が珀訪を1人で出すわけがない」と。
だが鬼灯は「信頼している鬼女の方とご一緒なので」と言うので、白澤以外はあまり気にも留めていなかった。
白澤はそれからほぼ毎日のように閻魔殿に寄って、鬼灯に珀訪は何処だ。まだ帰っていないのか。などと言い、追い掛け回しているそうだ。
殴られるので、一定の距離を保ちつつ、ついてくるので邪魔で仕方がないと零していたっけ。
私はここから出たい気持ちは山ほどあるが、尽きる命でもなし、長い生涯のうちの一瞬をここで過ごすことも受け入れたのだ。
白澤には悪いが、期待はしていなかった。
だが私達は知らなかった。
少しづつ、彼は私の居所に近づいていることを。
少しづつ、理解していることを。