[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第5章 仙桃の花の香り:第三期
つまり、鬼灯の手に届きはするが、他者の目にも触れない場所にあるどこか、と、言うことか。
これは厄介な檻だのう。
「最初からそのつもりだったの?」
「最初は能力さえ無ければ、貴女がここで1人で生きて行くのは無理なのではないかと思っていました。そうしたら、私だけを見て、私だけを頼りにしてくれるのではないか、と。
ですが珀訪は失っていた記憶もあの害獣のせいで取り戻し、閻魔殿を自由に歩き、1人で桃源郷にまで行ってしまうようになりました。 」
「でも、私は鬼灯の嫁じゃないか。私は鬼灯の命が尽きるまで傍に居ると決めて一緒になったんだよ?」
握り合った手に力を込め、顔を覗き込んだ。
ハッキリとはわからないが、いつもよりずっと表情が見えず、生きた心を感じない。
「嫁にしてしまえば、誰も珀訪に手を出さないと安易に考えた私が愚かだったのです。そうすれば全てを私の物にしてしまえるなどと、浅はかな事を考えました」
視線は交わっているのに、全く私を見ていないようなその目が急に恐ろしいような気がしてきた。
私の中の何かを見透かしているのか、それとも、私に鬼灯の中の何かを見つけて欲しいのか。
「私はお前のモノだよ。鬼灯。気が済むまで好きなようにするがいいさ、構わんよ」
その日から私はこの部屋で鬼灯だけを待ち続けた。
日に2度か3度、食事と本を持ってきてくれる。
鍵は開かないが、受ける事だけ可能な受話器が設置されており、そこへ時折鬼灯からの電話が繋がった。
夜はそこで2人で眠り、夜話として皆がまた私は放浪していると信じていることを聞く。
私の能力の封印についても聞いてみたが、かなり古い呪術で、人の身でなければ効果が薄いということがわかった。
つまり、あちらに転生したのも鬼灯の計画だったのであろう。
解除方法は「知りません」と言われた。