[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第5章 仙桃の花の香り:第三期
さあて、私は今何処に居るのでしょうか?
あれからぐっすりと眠ってしまった私は、目を覚ましても周囲が暗い事に驚き、飛び起き…ようとしたにも拘らず、起き上がる事すら出来なかった。
体中が痛み、どうやらガッチリ縛られているようである。
だけれども、そこは柔らかな布団の上であろうことは頬に当たる布地の感触で想像出来た。
誰が一体なんの目的で私を?
捕まえても特に何の得にもなることは無いはずだ。
いや、むしろ鬼灯の嫁として?
もしそうなら一大事、幸い、強く締め付けられた紐の痛み以外は無かったので、とりあえずクチに加えさせられている鉄製の猿轡をなんとかしようと、舌で唇で悪戦苦闘する。
無駄な足掻きだろうか。
同時に、手足をモゾつかせ、そこからの突破も目論んでみる。
― ガチャ
「!?」
誰かが来た。
まだ能力の戻らぬ私では、首でも落とされたりしたら回復できるか定かではない。
ああ、私の存在意義よ…カムバック
「おや、もう起きたんですか?」
「(は?え?!?)ファ?へ!?」
聞き覚えのあるバリトンボイス、鬼灯か!?
見知らぬ悪党ではなく、いくらか安心はしたが、正直まだ混乱している。
「ああ、今、外してあげますね」
鬼灯が私の猿轡を外すと、唾液が伝ったのを感じた。
目隠しも優しく外してくれ、上から1つづつ拘束を解いて行く。
やっと自由になった開放感に、腕をさすりながら周囲を見渡した。
どこだろうか、鬼灯の前の部屋をすっかり片付けたような内装だった。
「鬼灯、あの」
「もう我慢の限界なんですよ」
「え?」
蝋燭の炎がゆれる薄暗いのこの部屋で、鬼灯はベッドの縁に居る私の正面に椅子を置いて、私の手を取り話し出した。
「珀訪、少し前にお話しましたよね。どこかに閉じ込めてしまいたいと想うことがあると。」
「うん」
「その部屋はここなんです」
「ここが…」
「はい」