[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第4章 嫁の理/鬼の業:第二期
いつから黙っていたのだろうか。
鬼灯は頭を抱え込んでしまった。
「貴女は素晴らしい女性です。私なんかには勿体無い。」
「私にも鬼灯は勿体無いくらい素敵な男だと思うよ」
お世辞でも良いと気を良くして隣に座った。
こてんと頭を鬼灯の肩へと寄り添った。
あたたかい。
「いつも、何をしていても貴女を何処か誰も知らぬ処へ閉じ込めて隠してしまいたいと考えてしまっています。夢の中でさえ、閉じ込めた貴女が私だけを求めてくれることを願ってしまっているのです…」
「…」
これは重症だなあ。
こんな存在するしか能のない、嘘っぱちの皮を被った老い耄れにここまで入れあげていたなんて思いもしなかった。
ずっと命の長いせいで多少長く気の迷いにのぼせ上がっているだけだと考えていた。
そんな軽く考えていた自分をいくらか恥じた。
そんな風に軽んじていたことを心の中で詫びる。
「…幻滅したでしょう」
表情は鬼灯の大きな手に隠れて見えず、くぐもった声だけが漏れ出る。
私は鬼灯に寄り添ったまま答えた。
「するもんか」
「してもいいんですよ」
「頼まれたってこの程度で鬼灯に幻滅したりしないね」
「じゃあ嫌っても良いです」
「金を積まれたって嫌わない」
「何故ですか…」
「嫁だからさ」
スッと鬼灯の手が膝元に下りた。
やっと顔が見えたので、彼の膝元にある彼の手を自分のほうへと持ってきて撫でた。
「貴女は私だけを好きな訳じゃないですよね?」
「みんなの事はたしかに好きだよねえ」
静かに、話しかけてくる。
金魚草が明らかにソワソワとこちらを見ているのは気付いていたが、あいつらの知能がどの程度なのか正直期待をしていないのでムシした。
黙ってそよいでいなさい。
「今まで、何人と結婚しましたか」
「1人」
「誰ですか…」
「鬼灯」
抱きしめられた。
「優しい嘘、ですよね」
「嘘なんてつくものか」
いつもより鬼灯の体温が高い気がする。
そうして暫く、抱きしめられ、私は鬼灯の背を撫でていた。