[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第4章 嫁の理/鬼の業:第二期
食事を終え、大王と別れて金魚草の元へと来た私達。
私達は金魚草のゆれるのをお互いに見ていた。
目も合わさず。
「…」
「…鬼灯、何をむくれているのかねえ、お姉さんに話してみなさいな?」
普段より無口で、普段より口角が下がって、普段より眉間のシワが若干深いこの表情を読める者はあの世広しとは言えども、この私くらいのものだろう。
金魚草の世話の注意についてくらいしか特に話すことも無く、こうして黙って隣に立っていると言うことは、何か話したいことがあると思うのだが。
「別に」
「エリカ様かよ」
「…茄子さんにも珀訪ちゃんと呼ばれているんですね、知りませんでした。」
「はあ?」
そう言えば、先刻なにやら反応を示していたがまさかあの程度のことでとは。
「そうだねえ」
「それに、かなり親しそうに話して居られましたし、出来れば詳しく説明していただきたいと考えていました」
「説明って言われてもなあ」
今まで私と目も合わさずに淡々と話していた鬼灯だったが、突然横に居る私をギッとにらみつける。
「もしや夫である私にも言えぬような間柄ではないでしょうね!!!!?」
どうしたこの鬼。
「プスッ 大きな声を出さないでよ、ああ、驚いた」
驚いたと言いながらつい吹き出してしまった。
「なあんにもないよお。茄子くんとは時々だけど芸術作品についてディスカッションしたりする間柄だよ。最近は芸術の世界と現実の世界では常識が違っているだとか、油絵の具の香りについてのロマン的考察とか話したなあ。あ、さっきは唐瓜くんの小さい頃の話とか聞いてたっけ」
私にとって、何もやましいことのない関係なので、ヘラヘラと笑いながら焦る鬼灯へと答えてみる。
冷や汗すら流す彼に袖からハンカチを取り出して顔をふいてやった。
縁側へと押しやり、無理やり座らせ、頭を低くさせ、ついでに頭も撫でてやる。
「自分を一途な方だと思っているけど、鬼灯はどう思うね?」
「私、は…」
「うん?」
「すみません、信じては居るんです。ですが、時々、ほんの些細なことでも無性に居ても立ってもいられないほどの焦燥感に苛まれ、どうしても疑ってしまうのです」