[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第4章 嫁の理/鬼の業:第二期
3人並んでもぐもぐむしゃむしゃと食事をしつつ、マナーは悪いがTVを見ながら時折雑談を交えていた。
「あ、鬼灯の好きな子だ」
「誤解を招きそうなんでやめてください」
TVの向こうでは近頃現世で活躍中のリポーターが動物紹介のコーナーをやっていた。
彼女は芸人さながらのぶつかり系リポーターで、鬼灯は最近この娘が出ると無言で画面を見つめている。
だから「鬼灯の好きな子」と私は呼んでいるのだが、人目のある所で彼女の話題を出すと眉間にシワを寄せ、片目を上げ、変な顔で「やめてください」と言う。
だが正直、彼女の名前すら覚えていない。
「え~、現世ではアイドルの追っかけするだけで浮気だって離婚されちゃう旦那さんも居るらしいから、鬼灯くんも気をつけないといけないかもしれないね」
あははとのんきに笑う大王の目の前で、鬼灯の手にあった箸が折れた。
後は言わずもがな、金棒で大王の眉間を強打し、大王は椅子から転げ落ちた。
「ご安心ください、私は珀訪以外の異性に興味がありませんので。それに、動物が見たくてあの番組を見ているのであって、誰が出演していようと関係のないことなのです、おわかり…いただけましたか?」
喋りながら転がっている大王に近づき、脅すように顔を近づけて問いかける。
大王は青ざめながら拘束で頷いていた。
「ねえ、冷めちゃうし行儀悪いよ?」
「…そっ、そうだよ鬼灯くん。とりあえず食べちゃお、ね」
「…はぁ」
浮気だとかなんだとか、したければすれば良いのさと、どこかで思ってしまっている自分が居る。
本当は折角手に入れた恋仲を手放すのは惜しいが、飽きられた時、相手に縋るのはきっと私自身が辛いだろう。
それくらいだったら、最初から期待をし過ぎないように制限している方が苦痛は少なく済む。
人は死ぬ、鬼も死ぬ、鬼神となり得たこの鬼灯も私を置いていつかは逝くのだろう。
それでも私は"存在する存在"なのだ、彼が求めるならば彼の最期まで傍で"存在"し続けてやろうじゃないか。