[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第4章 嫁の理/鬼の業:第二期
考えたり、話したり、遊んだり、味わって最後にと立ち寄った店内で、桃の髪飾りを見つける。
薄桃色の白っぽい花が咲き、白澤の耳飾に似た細い飾り紐がゆれて雅な印象を受ける。
さすが天国と言うところか、花は生花で優しい香りがした。
「これが気に入ったの?」
「うん、いい香りがする。ほらっ」
白澤の鼻先に髪飾りを出しだす
そっと近づき、すぅっと胸に花の香りを入れ、微笑んで髪飾りを受け取る白澤。
「じゃあこれにしよう、珀訪には血生臭い地獄の香りより、こんなたおやかに咲く桃の花の香りの方が似合うよ。」
「そんな。そんな可憐な感じじゃないよ」
へへとテレが出てしまう。
こいつの女性経験は私の知らぬうちにいかほどとなったのだろう、異常なほどにクチがうまい。
「ほら、昔はよく僕があげた花を髪に飾ってくれてたじゃない。思い出すよね。あの時から珀訪は花が似合うなあって思ってたんだよ~」
当時は華美な衣装が流行っていたから、それに逆行して現代で言う森ガールのような衣装を好んでいた時期があった。
そんな私にどこからか摘んできたらしい小花を差し出し「似合うと思って」と飾ってくれた。
「懐かしいなあ、私よりも白澤の方が花が似合うんじゃない?なんて言って花まみれにしたっけ」
「そうそう」
あははと子供っぽい昔のやりとりを話題に、店をウロウロしているうち、白澤はいつの間にか支払いを済ませていたらしい。
鬼灯の髪飾りを外され、立ち止まると 代わりに桃の花の髪飾りを飾ってくれる。
わあと桃の花の香り、揺れる紐飾りに浮かれていて気付かなかったが、白澤は、鬼灯の髪飾りを憎憎しげに見つめながら小さな小箱へと仕舞ってくれていた。
「ありがとう、とても素敵!」
鏡の前へと飛び込み、青臭い少女のようにはしゃいでしまう。
白澤は女性癖が酷いとよく言われはするが、私に無理矢理迫ったり、恋人同士のするような事を求めたことはほとんどない。
手を繋いだり、喜び合って抱きしめあう、頬や額へ祝福のキス
そんな他愛のない友情から産まれるやりとりしかしたことはない。
だから、気にも留めていなかったし、見ないことにしていたのかもしれない。
ほんの時折、彼が私を他の女性へ向けるような熱っぽい表情で見ることを。
そんなことしない、出来ない、信頼している。