[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第4章 嫁の理/鬼の業:第二期
「白澤様、お客様ですよー!」
「は~い…」
「すみません、すぐ来ますので」
「急ぎではないので、それより、もしかして貴方が桃太郎さん?」
勝手にカウンターの前にある椅子に腰掛けると、桃太郎のほうへ顔を向けて問いかけた。
白澤はあの声だとすぐには出てこられないだろう、バリトンとまでは行かずともかなり低い、寝起きの声に聞こえた。
「あ、はい。白澤様の部下兼弟子の桃太郎です。」
「初めまして、珀訪と言います。白澤とは古い友人で…」
「恋人だよお~」
友人ですと言おうとすると、背後からでろっでろになった白澤がかぶせ気味に発言する。
振り返るとまだ前ボタンも閉じず、チャックも上がりきっていない。
なんとだらしの無い姿か。鬼灯の言う『スケコマシ』の朝そのものを目にしている。
「その恋人とかの前でそんなだらしのない格好。仕事中でしょう?」
だらしのない姿に子供っぽさを感じ、プスッと笑いながら指摘する。
否定しなかったからかまだ顔は青ざめてはいたものの、嬉しそうな顔をしてカウンターの真向かいに駆け寄ってくる。
「あはは、ごめんごめん!ちょっと飲みすぎちゃってさ~」
「弱いんだから気をつけなきゃあねえ」
「昔よりは強いさ!」
「どうだか」
「なら今度、一緒に飲もうよお~、鬼灯ナシでさ」
「考えとく…かな」
「え~」
「それより、いい弟子を持ったみたいだね?」
人懐っこい白澤に意識を持っていかれそうになったが、桃太郎のことが知りたくて話題を持ってゆく。
彼は目をいくらか見開いた表情で
「もしかして、鬼灯様の奥さんですか?」
と、聞いた。
そりゃあ顔も知らぬ噂上の人間なのだから仕方の無いことか。
「クスクス、ええ、そうです。以後お見知りおきを」
「桃タロー君、今はそうだけど彼女はいつでも僕の恋人だからね!」
「浮気はしないと約束しているから、親友と言うことで」
「ええっ!…親友以上、恋人未満?」
「しつこい」
白澤の近い顔を押し戻す。
「初めてお会いしますよね、ずっと閻魔殿に篭りきりでいらしたとか」
「ん?ああ、そうだよ、ちょっと色々あって1年くらい篭ってたね」
「今日は息抜きみたいな感じですか?」
若干不満げな様子の白澤をよそに、
大騒ぎせず、普通に接客をする桃太郎に好感を重ねた。