[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
私はその後、鬼灯が私の背を追い越した頃に姿を消してしまったのだ。
だが、約束は行われ、私は約束どおりに答えを出した。
方法はどう在れ、選択はされたのだ。
「随分と遅くなりましたが、貴女を連れ戻し、求婚もし、答もいただきました。私は約束を果たし、貴女も約束を果たしました」
「どうやって私を見つけたの?」
「私にも言えぬ事はあるのですよ」
「禁忌を犯し、己を追い込んだりしてはいないだろうね?」
「亡者が幾人か消えただけですよ」
「そう…、それは悪いことをしたね」
「亡者ですから」
「…」
深くは聞くなと言われた様な気がして、大人しく担がれたまま閻魔殿へとたどり着く。
沢山の視線もあるが、そろそろこの体制も疲れてきた。
「1人で歩けるよ?」
「…」
「もう逃げたりしないよ?」
「…」
「ねえ、鬼灯い?」
「…」
「折角の着物がこれじゃあ見せびらかすこともできないよ」
「…わかりました」
やっとのことで地面と足がくっつく。
あれから1日も経ってはいないが、もうすっかり日も暮れていた。
「どこへ行くの?」
「私の部屋へ」
「そうだねえ、少し、眠りたい気分」
「私は仕事がありますので、ゆっくり休んでください」
へいへい、と苦笑し、昔と変わらない中身で大きな図体の男の腕にすがり付いて歩く。
歩きにくいですよ。と言われても、それすら彼の甘えた言葉に聞こえた。