[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
若き鬼灯と私はよく話をした。
「珀訪さん、地獄はこれからもっともっと変わります」
「鬼灯も閻魔大王も、とても頑張っているものねえ」
「はい、それで、お給料も沢山貰える様になってきました」
「鬼灯はほしい物があるの?」
「…あります」
まるで弟、言い過ぎれば我が子のような身長差があり、並んで座っているにも拘らずその差は歴然であった。
それでも、最初に出会ったあの頃と比べればもうかなり顔も近くになった。
幼い頃を知る故にか、鬼灯には母性にも似たような愛情を注いできたつもりだ。
彼もそれを感じてくれているのか、色々な相談や愚痴を零してくれ、私もそれを聞いてうなづいたり、否定したり、受け入れたり、そんな日々をつむいだ。
少し俯いていた鬼灯が私に向かって顔を上げる、いつもより強い視線を感じ、覗き込んでいた私は息を呑んだ。
「珀訪さん、貴女が欲しいのです。私だけのモノにはなってはいただけませんか」
「え、鬼灯…突然その」
狼狽している私に畳み掛けるように、迫る。
「わかっています、まだ私は未熟で貴女の背も追い越しては居ないし、男らしさも足りないでしょう。でも、貴女1人を養えるくらいの収入もありますし、必要なら家も買えます…だから…!!」
「私は誰かと添い遂げられるようなんじゃないよ、でも鬼灯がもうすっかり素晴らしい男性になったことはよおくわかったさ、もっと愛らしい鬼の娘も沢山居るじゃないか。ほら、お香ちゃんだったかな、あの子はどうなんだい?仲が良いのはお見通しだよ~ふふ」
いつも通り、撫でようと差し出した手を、鬼灯は掴む。
「いいえ、彼女とはそんな気持ちはありません。それに貴女はわかっていません。珀訪」
「うん?」
「私が嫌いですか?」
「大好きに決まっているよ!どれほど好きかは鬼灯に伝わっていると思っていたけれど」
「じゃあ、どうしてですか…」
慰めるつもりで微笑んでみたが、鬼灯はすっかり落ち込み、少し苛立つようにつぶやく。
「それじゃあ、鬼灯が私の背を超えた時、まだ私を嫁にしたいと思っていたなら、答えを出そう」
「本当ですか!」
「私に二言は無いさ…、ごめんね、臆病者だ。私は」
「そんなことありません、待っていてください、必ず」
「うん」