[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
ギシギシと大きな音を立て、誰かが店内に来たようだ。
― スパーン!!!!
「珀訪!!!!! やっと見つけましたよ!」
私の名を呼びながら大きく振りかぶって鬼灯選手の第2投が炸裂。
「ぎゃあ」と悲痛な白澤の叫びと共に窓ガラスは砕け、ふっとぶ男の足を最後に、部屋には鬼灯と私の2人が残った。
廊下からやっと追いついた老婆が般若の形相で叫んでいた。
「アンタァアアアアア!!! 弁償してもらうからねええええ!!!!!!」
「今、窓を飛び出して店先に転がっている男に請求してください、私は彼女を連れて帰ります。」
抗う間もなくガバッと抱きかかえられ、気絶している可哀想な白澤を尻目に鬼灯と私はその場を去った。
悪く思うな白澤よ、いつかはこうなると思っていた。
私にあわせ、ゆっくり歩いていたのだろう。
今は抱えているのでかなりのスピードで歩き、無言で居た。
「ねえ、鬼灯」
「…」
「ただいま」
少し、歩くスピードが落ちる。
ため息が私の後方から聞こえる、肩に担ぎあげているのだ。
「思い出してしまったんですね」
「うん、そうらしいやね」
「どこまで、思い出しましたか?」
「私が私ではない私の人生を歩んだ理由、までかな」
「約束は、覚えていますか」
約束?迎えに来てという話をしたことを言っているのだろうか。
「私に何かあったら…」
「迎えに行く。それもですが、もう1つ、私が貴女に宣言したことですよ」
「まだ思い出せていないねえ」
「『私が大きくなったら、一緒に暮らしましょう』という約束をしました」
それは実質のプロポーズとしか思えない。
が、聞いて思い出すに当時はまだ青年で、初めて鬼灯から大人の顔を見つけた時のことであろう。
私は1度、彼のプロポーズを断っている。