[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
私は既に立派な大人の女性だった。
そこは天国の桃源郷、熟した果実の強い香りが漂い、酔いそうな程だった。
目の前には美しい衣装に身を包む若き白澤が立っていた。
彼は変わらず優しく微笑み、私に何事か話しかけている。
傍を見ると、まだかなり若い鬼灯が居り、周囲には沢山の酒瓶と巻物が転がっている。
「こんにちは、今日は色々教わっているのです」
「うんうん、勉強熱心でいいよお~」
このようなへべれけで何を教えるというのか
私は鬼灯の書き止めていた巻物を覗き込むと、様々な妖術法術などの事柄が仔細に書かれていた。
酔っても知識は衰えずと言う事だろうか。
「本日はどちらへ行かれるのですか?」
「今日は、どうしようね、気ままに歩こうかと思っているけれど」
「じゃあいいじゃん、珀訪ちゃんも一緒に飲もうよ~、えへへ」
「宜しければどうぞ、沢山お持ちしましたので」
手馴れた接客術で酒を差し出す鬼灯。
「じゃあ御呼ばれしちゃおう」
ありがとう、と酒をいただく。
うん、スッキリ甘い
「鬼灯、私のことならなんでも覚えていてくれるんだねえ」
「いえ、お気に召して良かったです」
「もー!僕も珀訪ちゃんのことならなんでも知ってるもん」
「あっはっは、白澤様の知らぬことはこの世には多くないよ」
ワイワイと楽しく夜が更け、次の朝日が昇る頃まで宴を楽しんだ。
「さあて、それじゃあそろそろ行こうかね。お酒、ご馳走様。とっても美味しかったよ」
「珀訪さん、もう行っちゃうんですか?」
立ち上がった私を見上げる鬼灯の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
「もう珀訪でいいよ、鬼灯もすっかり大人の席に居てもおかしくない立派な大人の男になったようだしね」
「子供の成長は早いからね~、ふへえ」
「酔いすぎて落ちるんじゃないよ?ふふ」
「へいきぃ~」
デロッデロになりつつ酒を喰らうスピードは衰えずに返事をする。
「また来てくださいね」
「うん、何かあったら迎えに来てね」
「わかりました」
…わかりました
鬼灯の声がリフレインする。
『もっと色々思い出してみようか』