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[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]

第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期


「いらっしゃいませ、休憩でございますか、どうぞ奥のお部屋へ」


怪しげな老婆が案内する、まだ明るいというのに薄暗い店内。
外装と違い、中はほどほどに小奇麗で、小さな行灯が壁に並んでいた。
ミシ…ミシ…、廊下は人の居所を知らせるが為にか、それなりに大き目の音を響かせた。
私たち以外の客は居ない様で、話し声も殆どなく、外から漏れ聞こえる琴の音や笑い声が幽かに聞き取れた。


「さあ、こちらでございます。ごゆっくり」

「謝謝、さあどうぞ~」

「う、うん」


老婆は私達を案内した後、さっきまで聞こえていたあの床のきしむ音を殆どさせずにフスマを閉めて番台へと戻ってゆく。
あの老婆、もしや足が無いのではなかろうな?と不安な気持ちになる。


「ねえ、それより本当?あの朴念仁の鬼畜野郎と婚約って」


部屋は和風の旅館のような内装で、小さな冷蔵庫までついている。
入ってすぐに置かれた重厚そうな卓袱台が目を引く。

白澤はその小さな冷蔵庫から瓶とグラスをいくつか取り出した。
私はとりあえず、卓袱台の前に座った。


「よく覚えていないけど、プロポーズを受けたと思う」

「えー!!覚えてないんだったらそんなの無効だよお、やめよやめよ」


「ハイ、ドーゾ」とグラスに透明な液体が注がれた。


「これは?」

「清酒だよ、さっぱりしていて飲みやすいよ、珀訪好きだったよね?」


私は今朝までは確実に未成年だったので、好きとか嫌いとかの問題ではない。


「私、まだ20歳になってないから…」

「何いってんの?本当になにもかも忘れちゃったわけ? 僕の目にはもう立派な大人の美女が映ってるんだけどなあ」


ウットリとした目、優しく絡みつくような話し方
正面に座っているため、さほど距離は遠くも近くも無いのだが、べったりとくっついているかのような違和感を感じた。


「忘れたって?」
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