[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
「あれ、鬼灯じゃん」
白澤様は狐の美女と仲睦まじい様子で声をかけてきた。
存在を思い出すと同時に、まるでそれが自分の記憶であるかのように彼との過去のやりとりの一部も思い出す。
その声に反応し、振り返った私とは相反して鬼灯は檎さんの方を見たまま、まさに鬼の形相で居た。
私は振り返ったことで恐ろしいものと、恐ろしいものを見ている怯えた檎さんの表情を見ることを逃れた。
「え、珀訪ちゃん?ちょ、なんで?」
美しい女性を手放し、こちらへと慌てた様子で駆け寄る白澤に私は驚き鬼灯の正面へと身を隠してしまう。
鬼灯はそんな私を腕で包み込んでくれる。
「鬼灯、どういうことだよ!」
「何の話ですか?」
「…まあいいさ、そっちがその気ならそれでも」
白澤は眉間に眉を寄せて鬼灯に詰め寄っていたが、ため息をひとつついてひと睨みしていた。
このやり取りがどういう事から行われているのか理解できないまま おどおどとしていると、突然白澤の顔が近くに来た。
「やあ、僕を覚えてる?」
若干唐突だが、ニコーっと優しそうに微笑む彼を見て、安心した。
私は鬼灯の手からゆっくりと離れ、微笑み返して会釈をする。
「ええと、白澤様…でしたよね?私、少し混乱しているみたいでまだコチラのことはあまり」
「白澤でいいよお~、ねえ、それより今から僕の店に来ない?歓迎するよお~」
手を広げ、今まで引き連れていた女の子達を完全に無視して私に笑いかけている。
背後では女の子たちが「また悪い癖が始まったわ」などとクスクス笑いながらそれぞれ、店へと入って行く。
おそらく、店の人なのであろう。
その時、ズイと鬼灯が私と白澤の間に入り込んだ。
「いえ、結構です。彼女は本日を持って私の婚約者となりました、結婚式には来ないでくださいね」
「はぁ!?ちょ、マジで!?」
「マジですよ」
「お前に聞いてない!珀訪ちゃん、本当? 今からでも遅くないから解消しちゃいなよ!」