[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
「珀訪」
「はい、なあに?」
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「鬼灯」
「どうしました」
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思考は唐突に停止した。
「おーい、兄さん!いい女連れてはりますなあ」
明るい口調でなんとも信用しがたい、独特の声色が鼓膜にぶつかった。
たしか、彼は・・
「こんにちは、檎さん」
「どーもっ、鬼灯様、今日はどうしはったんじゃ?」
キセルをぷかぷかと燻らせ、だらりとだらしなく縁台に寝そべっている男の名前は檎(ごん)、野干(狐)の変化した姿で、太鼓持ちを勤めている。
「こちら、私の婚約者の珀訪です」
鬼灯の斜め後に影のように隠れていたが、繋いでいた手でグイと前へと押し出された。
その手はそのまま私の腰元を抱いたので、また顔に熱が昇ったような気がした。
「はっ、じめまして・・!珀訪と申します、宜しくお願いします」
会釈程度の軽いお辞儀とささやかな笑顔で自己紹介をした。
「ほいよ、珀訪ちゃんかいな。うん、鬼灯様は目が肥えとらっしゃるからなあ、こんな器量よしの女の子を捕まえるなんてなあ」
はっはっはと軽い口調で褒められたが、言いすぎだろう。
お世辞にも程があると素直に喜ぶ方法を見失うのだと知る。
「ええ、そうでしょう」
鬼灯はほぼ無表情のまま肯定するので、言葉が出ないまま真っ赤になって俯いてしまう。
”釘を刺す”相手とはこの人だろうか?
私は瞬間的に忘れていたようだ。
彼の存在を