[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
と、まあなんやかんやとありまして。
「珀訪の黒髪に似合うと思いまして。」
お香さんの協力により、着物一式を用意してもらった後、丁寧にお礼をし、鬼灯と私は2人で並んで当初の目的地へと歩いていた。
鬼灯は、ゴソゴソと大量に買い込んだ着物やらなんやらを詰め込んだ紙袋から小さめの箱を取り出し、それを私に差し出しだしてくれたのだ。
「これは?」
「髪飾りです、お香さんにも見てもらいましたから変なモノではないと思いますけど、開けてみてください」
その箱を開けると、大小いくつもの鬼灯が鈴生りの美しい簪が出てきた。
「わあ」
その美しさに思わず声が漏れ、箱から取り出すように促され、簪を手にした。
「空き箱は私が預かります」
「すっごい!こんな綺麗なの見たことない!」
簪を翳すとガラス細工なのだろうか、鬼灯の中身が透けて見える。
オレンジのガラスの中に真っ赤なまあるい球があるようだ。
そしてそれは鈴のようなものらしく、小さなチリチリとした涼しげな音が聞こえる。
それは余韻を残す、心地よい音色に感じた。
「本当に素敵、本当にありがとう。こんなすごいの選んでくれるなんて、センスある」
「気に入って貰えたようですね、貸して下さい」
簪を鬼灯に渡すと、私より幾分も高い背で私を見下ろした。
手際よく私の髪の毛をまとめ、そっと簪を差し込む。
これは昔の女の影を感じる。
それもそうか、鬼灯はすっごく長生きしているし、そういうこともあるよね。
正直かなり複雑な気分。
「さあ、できましたよ。顔を上げてください」
「似合うかな?」
期待してしまう。
鬼灯を見上げ、繋がる視線につい熱を込めてしまう。
そっと耳元に手を這わされ、ゾクリとした。
「とても綺麗ですよ、さあ見せつけにいきましょう」
「え?」
「さっきも言いましたけど、釘を刺しに行くんですよ」
「釘って、誰に?」
「豚ですよ」
今までなんだかいい感じで、慣れないその雰囲気にウットリとしていたのに、唐突に殺気を零す彼についていけるか不安になる。