[鬼灯の冷徹]鬼神の嫁の心得[パラレル→原作沿い]
第3章 記憶の酒瓶転がし候:第一期
猛烈な視線を浴びつつ、ズンズンとどこへやらへと突き進んだ鬼灯と珀訪は、道すがら私にとって初めて会話らしい会話をした。
とは言っても、だんまりを決め込もうとしている私の代わりに鬼灯が話しかけてくれていたのだが…。
「あの、珀訪さん」
「ハイッ!」
声が裏返ってしまった気がする
「…気付かない私もどうかと思うんですが、いつの間に着替えたんですか?と、言うかマジカル系の僕と契約して魔法少女n」
「違います」
「・・・」
「・・・」
「プッ」
鬼灯ってこんなキャラクター、いや、こんな人だったんだなあ。
少し、笑ってしまった
「ああ、やっと笑ってくれましたね」
「え?」
「いえ、いつもと少し様子が違ったので。いつもは、もっと笑顔の多い人だと、私は思っていましたから」
鬼灯はこちらを向かずに存在しなかった、もしくは存在していたと思われる”私”を思い出しているようだった。
私というキャラクターは実際の私とは違い、とても思慮深く、温和で、美しい女性像で脳内に存在していた。
それと比べ、私はものぐさで、泣き虫で、意地っ張りで、たいして可愛いとか綺麗とかそういう人間ではない。
少なくとも、今こうしてお姫様抱っこなんてされててもいいような人間じゃない。
ああ、どんどん卑屈な自分を思い出してしまう。
「私、そんなんじゃないですよ」
ポツリとつぶやいてしまう。
「では、今まで私は珀訪にどう見えていましたか?」
今まで。
ドSだけど優しくて、無表情だけど感情豊かで、動物が好きな鬼。
そういう印象を持っていたけど、本当にそれが鬼灯なのだろうか。
私は所詮は液晶画面の向こう側の人間で、なにかしらの偶然でこちらに来れたということなのだ。
そもそも、これは夢なんじゃないだろうか?
だとしたら楽しむべきなのではないか。