第2章 くだらない昼下がりの、くだらない議題について。【澤村大地】
ある放課後の昼下がり。私はバレー部マネージャーとして、部室で部誌をせっせと書いている。今日は快晴、と誰がこんな天気などというどうでもいい情報を求めるのかもよく分からないが、とりあえず所定の欄に記入する。
仕事に勤しむ私の隣では、むさ苦しい…否、青春を謳歌する後輩どもが、額を集めて何やら男子トークを繰り広げる。
「やっぱ彼女にはコスプレさせてみたいっすよね!」
「あー分かるわ。ほら、烏野はブレザーだからセーラー服とか着せてぇ」
「メイド服も王道だよな」
私に誰か辞書を与えてくれ。全力投球で此奴らの浮かれたおめでたいオツムにヒットさせてやる。デリカシーという言葉をお前らは学べ。
「猫耳も悪くないと思うぞ」
「なるほど!尻尾とかつけてもいいっすね!」
お前らは発情期の野良猫か。
「でも田中先輩、一つ質問してもいいッスか?」
「おうよ、日向。何でも来い」
「そういうのってどこで買うんスか?」
「それはだな、街の方にあるアダルトショ…いだだだ?!?!?!」
悲鳴を上げる田中。その隣でキョトンと首を傾げる日向。そしてその他後輩どもが顔を引きつらせた。
私は精一杯の笑顔を作って、先輩としての優しい言葉をかける。
「そろそろ田中はさ?気を使うという言葉を学ぶべきじゃないかな?」
「み、み、みみみ耳が痛いっす美咲先輩!」
「あら、手が勝手に」
ぱ、と手を離すと赤くなった耳を涙目のままさする田中。
あのねぇ、と私はドン!と床を踏み鳴らし、仁王立ちで怯える男どもを見下ろした。
「女の子はね!相当自分に自信がない限りコスプレなんてしたくありません!あんたたち、女の子側の気持ち考えたことあんの?」
すると、しゅん、となる後輩たち。
やれやれ、本当に発情期の野良猫だったとは。そんな奴らはエロ本AV止まりでよし!出直してこい!