第4章 変わらぬ景色、変わりゆく時【西谷夕】
「俺はずっと美咲のことが好きだった。…多分」
「夕、多分は余計だよ」
「だってよく分かんねぇし…お前といるのが当たり前すぎて」
背中に回された腕の力がキュ、と強まる。
「でもお前が告白されたとか聞くと、すげぇモヤモヤして。こんなのいつからかなんて分かんねぇよ」
「…私と一緒だね」
「…そっか。なんか、良かった」
私が全身の力をふっと抜いて夕に委ねると、一瞬夕の体が強張る。ちょっと可愛い。
あぁ、そうそう、と私は口を開いた。
「夕、この前『mission』ってアクション映画見たいって言ってたよね。あと、バレーシューズが壊れたって言ってた」
「え?あ、あぁ。言った」
「…私も一緒に行っていいかな」
夕がはっと息をのんだ。
「…お前最高」
そう言った唇が、私の額に落ちる。
「キスなんて全然意味が分かんなかったけど…今はお前にキスがしたい」
夕になら、いいよ。
私はコクリと頷いた。
夕の顔が真っ赤なのは、きっと、沈みかけた陽のせいじゃない。
昔から変わらない景色の中、私たちはどちらからともなく、ふっと笑い合った。
『変わらぬ景色、変わりゆく時』おわり