第27章 No Way!!【牛島若利】
「一体何なんだ、簡潔に言え。俺は練習に戻りたい」
部活動後の自主練をすでに始めている体育館をちらりと見やって、そして再びこちらを見下ろした。
色々と言いたいことはあるのだが、練習の時間ではあるため、手短に話すことにする。
私はピンクのメモ紙の文面を恐縮ではあるが拝見させていただいた。
「このメッセージは読みましたか」
「ああ」
「『牛島先輩 今日の放課後、裏門に来てください。待ってます』」
「そうだな。部活の時間だ」
「そうそう、放課後は部活の時間……って、は?」
危うく普通に頷きかけた。
おいおい、想像していたよりも酷いぞ、これ…。
「部活だから?行かなかったの?」
「…?そうだが」
「だからそのキョトン顔はやめろ!」
「お前は何を怒っているんだ、全く…」
「つ、つまりだ、君は乙女の一世一代の告白をすっぽかし、あまつさえ、のうのうとスパイクを打っていたんだな?!」
先輩呼びをしているから恐らく後輩の女の子だろう。可愛らしい花柄のメモ紙に、控えめな文字。きっと決死の覚悟で書いたに違いない。
それを…それを…この朴念仁は『部活の時間だな。仕方あるまい、練習が優先だ』だとかなんとかと思って!放置したんだ!なんて酷いやつだ!
「告白?そんなことは書いてないだろう」
「いや思いっきり告白するために呼び出す文面だろうがこの朴念仁!鉄仮面!分からず屋!」
ああ、頭痛くなってきた…『これからあなたに告白するので来てください』なんて図々しい呼び方があるか、このボケナス!
あまりにこの少女が不憫である。すっぽかされたという事実と、こんなやつを好きになったということが…。