第27章 No Way!!【牛島若利】
「あんたってやつは、本当に情けない男だ!男として恥ずかしくないのか!」
自分よりひと回りもふた回りも、いやそれ以上に大きな、視界を塞ぐ壁ーー否、身体の持ち主を見上げながら私はそう叫んだ。もちろん相手は男なので、私の言い放った言葉は相手を罵っている、というわけだが。
「そうか。俺にはよく分からん」
牛島は怒って反論を言うわけでもなく、ショックを受けたような顔をするわけでもなく(予想はしていたが)。
むしろキョトンとした顔で、「お前は何を怒っているんだ」と言う。
ああ、そのキョトン顔をやめろ!
私は、水戸黄門が「この印籠が目に入らぬか!」と言うかのように、手にしているソレをキョトン顔の前にズイ、と差し出す。
「これがあなたの鞄から落ちました」
「拾ってくれたのか、すまない」
ただ拾ったことだけを感謝して受け取ろうと伸びてきた手から、私はサッと逃げた。
すると、訳が分からない、と微妙な顔をする牛島。あ、この顔、五色と会話をしてるときによく見る。
「…お前が欲しいなら別にやるが」
「私が欲しいんじゃなーい!」