第26章 究極の暇潰し【縁下力】
頭痛さえ感じてきている俺には気付くはずもなく、幼馴染は話を続ける(俺がぼーっとしてるから気付いてないと思っているのだろうが、話をしながら俺のポテトを盗み食いしているのはバレバレである)。
「縁下の中には縁下の自我がある」
「そりゃそうだな」
「私と縁下は別々の存在で、私の自我と縁下の自我は全く違うもので、交わることもない」
「あ、お前最後の一本を…」
「縁下、私はさ」
俺の小さな訴えはあっさりとスルーされ、今やテーブルの上に、しなしなになったポテトはない。あの、一応俺のポテトなんですけど。
「私は、縁下の自我を完全に知ることはできないんだよ」
「だから、お前は何をい、」
ーー。
「……え」
俺の口からこぼれた一文字は、決して中二めいた言葉に反応したからではない。むしろ、そのせいであれば良かったのに。その言葉によるものよりも、遥かに上回る衝撃が俺の体の中を走ったのだ。
「ねぇ、縁下の自我はさ」
何かが一瞬触れたところに、すでに温度はなく、何も言葉を発せないそれとは裏腹に、絡まった糸のように解けない思考回路が脳内に展開される。
「今、何を思った?」
「ーー今、俺は」
(俺に突然キスをした君のことで、頭の中が埋め尽くされてるよ)
「究極の暇潰し」おわり