第24章 学園不適合者【瀬見瑛太】
「…俺たちは似た者同士ってことか」
「そういうことになるな」
まぁ、ここに座れ。
本の山を退け、半ば命令するかのように俺に座るよう促す。
突っぱねる理由もなく、俺は美咲の隣に腰を下ろした。
「……」
沈黙が流れる。
この静けさを美咲は気まずいと思う様子もなく、再び本を開いた。
ぺらり、ぺらり。
知識がこの人の脳みそに流れ込む音だ。
すー、すー。
この人が息を吸い、息を吐き出す音だ。
俺は唐突に沈黙を破った。
「俺はお前のことが好きらしい」
「ほう…?」
ぺらり、と音が途絶えた。
「お前はどうなんだ」
すると美咲は目を伏せ、肩を竦めた。
「残念ながら私には比較対象がない。よって君に恋心を抱いているかどうかの確証は得られない」
「サンプルがないから分からない…と」
告白の場面に、こんなワードが飛び出すなんてな。
どこまでも奇人で変人だ。そんなのは、分かっていたことだが。
そうだ、と美咲は顔を上げる。
「サンプル作りに白布を連れてきて、君へのものと比較してみれば分かるかもしれないな?」
「…冗談。あんなの連れてこねぇよ。お前の話し相手は俺だけで十分だ」
ふむ…と少し考え、「確かにそうかもしれない」とこちらを向いた。
「不思議と君との会話は快いのだ」
俺はハッとなって、そう言う彼女の顔を見つめた。
「…人の顔を無言で見つめるというのは、些か無作法ではないのか?」
ふわりと微笑んだ表情は、すぐにいつも通りに戻ってしまう。
「やはり君は人との関わりにいくばかりか難点が」
「ちょっと黙ってろ」
俺は言葉を遮り、全く色気のない口元を、自分の唇で塞いだ。
奇人で変人でも、人には変わりないんだな。
薄眼を開けて見えた赤い頬に、俺はそんなことを考えていた。
「学園不適合者」おわり