第23章 進路調査と彼岸花【木葉秋紀】
「あー…今日も疲れたなー…」
天高く馬肥ゆる秋、だっけか。
空は秋晴れ、風も少なく、午後の日差しが暖かい。
屋上のコンクリート地面の上に寝っ転がったまま、うーん、と伸びをする。
「疲れたって言ってもお前、ほとんど午前の授業寝てたじゃねーか」
「え、バレてる?」
「隣の席だから嫌でも視界に入ってくるんだよ」
「見てたのー?やだー、木葉のえっち」
「お前の寝顔なんざ見て何の得になんだよ」
そう言う木葉は結構マジで嫌そうな顔をする。なんだよ、年頃の乙女に向かってそれは無いだろ。
まぁ、こいつの言うことに気にする必要は微塵もないので、ハイソウデスネーと適当に流す。
4時間目のチャイムの後は、必ず屋上に来て、パック牛乳を片手にメロンパンを頬張る。
そのとなりには何故かいつも木葉がいて、軽口を叩き合って無意味な40分を過ごす。
そうして予鈴とともに階段を降りて、教室の中に再び箱詰め。
3年生になって受験期は間近といったところ。
進路がどーだとか、大学がどーだとか、判定がどーだとか。
あーあー、面倒くさい。
「こーのはぁー」
「なんだよ」
「進路決めた?」
あれ、そういえば進路調査表って提出期限いつだっけ。
今週末?記憶にないや。
そもそもプリントどこやったっけ。
名前とクラスと番号書いて、あの表は埋めた…んだっけ。
白紙のまんまのような気がしなくもない。
探す気力もないから職員室寄って貰いに行こうかな。
「んー、まだ」
「だよね。木葉は仲間だって知ってた」
「進路調査とか面倒だよな。テキトーでいーよ、あんなもん」
「そうだよねー、テキトーでいいよね…」
ちゅーっとパック牛乳を吸う。
齧った市販の安いメロンパンはパサパサしてて、口の中の水分を奪っていく。
「このメロンパン、やっぱりあんまり美味しくないなぁ」