第2章 嵐の夜の訪問者
(嘘よ…)
珀鉛病の治療法はない。
フレバンスが滅んだ時でさえ手掛かりすら見つからなかったのだから。
だけど、一つだけ信じられることがある。
珀鉛病は伝染病ではない。
だから政府に連絡をするつもりなんて毛頭なかったし、二人の助けになりたいとも思った。
男が少年を大事にしている事も態度からいたいほど感じた。
この男なら、少しは信じてもいいかもしれない。
「誤解しないでほしいんだけど」
「え?」
「私は薬を用意してただけ。あの子、熱があるんでしょ?それに珀鉛病が伝染病じゃないことも知ってる」
そう言って引き出しから2つの薬を取り出して見せた。
「え…?いや…あいつは…」
キョトン、とした男の顔が妙に可笑しくて笑いそうになる。
「ほら、早く」
「おい!」
男の手を引いて歩き出すと、驚いて声を上げられたが構っていられない。
リビングに戻ると少年の容態が悪化していた。
さっきよりも呼吸が荒いし震えている。
「熱が上がったんだわ。早く薬を飲ませないと」
「おい!ロー、起きろ薬だ!飲め!」
少年をローと呼びながら肩を掴んで起こそうとする。
が、ローと呼ばれた少年は完全に意識がなく、目を開く気配はない。
「そんなに揺さぶらないで!病人よ!」
「わ、悪ぃ…」
「どいて」