第2章 嵐の夜の訪問者
カチャ…
「――!!」
金属音と同時に背中に硬い筒状の物を押し当てられたのを感じた。
「なにをしてる?」
まったく気付かなかった。
背後に居たのは男で、たぶん突きつけているのは銃だろう。
ドクン、ドクン…。
心臓の鼓動が早くなり、緊張で呼吸が苦しくなる。
「答えろ、何をしている?」
「何って…毛布を…」
「嘘つくんじゃねぇ。毛布を取るだけなら引き出しに用はねえだろ!政府に連絡するつもりか?」
グリッと背中に銃口を押し付けられ、いつ発砲されるかわからない恐怖に息を飲んだ。
「どいつもこいつもローを見るなりバケモノ扱いしやがって!」
ここに来るまでにずいぶん酷い目にあったのだろう。
怒りの篭った怒鳴り声にビクリと震えた。
「…私を、殺すの…?」
そうされてもおかしくはない。
政府に連絡が入れば命の危険に晒されるのは彼らなのだから。
自分の寿命が残り僅かなのはわかっている。
だけどいざ死を目の前にすると恐くて体がカタカタと震えだした。
覚悟を決めたといっても、メイサだって死にたくはない。
「くそっ…」
ギリッと奥歯を噛み締める音が聞こえた。
それから、銃がゆっくりと降ろされる。
「…頼む、何もしないでくれ。珀鉛病は伝染病じゃない。あと少しなんだ…。あと少しであいつは助かるかもしれねぇんだ…」