第2章 嵐の夜の訪問者
男を押しのけると、メイサは薬と水を口に含んだ。
それからローの唇に自分の唇を押し当て、薬ごと水を流し込む。
同じことをもう一度やる。
「薬はなんとか飲ませたわ。早く効き目が現れるといいんだけど…」
口元を拭いながら言うと隣がやけに静かなので、そちらに視線を移すと男が唖然とした顔でメイサを見ていた。
「…何よ」
薬を飲ませるため、とはいえメイサはローにキスをしたのだ。
そんな反応をされると恥ずかしくなるではないか。
「いや、すげーなと思って…」
「し、仕方ないでしょ!飲めないんだから」
「そうだけど普通なかなかやらないだろ。口移しとか」
「っ~!もうっ、助けてるんだから文句言わないで!」
「お、おう、悪い」
思わず怒鳴ると男はビクッと震えて謝ってきた。
体は大きいくせに妙に小動物ちっくだなと思う。
「それより、ローに何飲ませたんだ。一つは解熱剤だろうが、もう一つ違う物を飲ませただろ?」
「……」
(やっぱり気付くか…)
気付かないでいてくれたら…なんて都合よくはいかなかったが、さっきの彼の態度でバレても構わないと思っていたところだ。
「この子に飲ませたのは、珀鉛病の進行を抑える薬よ」
「なっ!」
やはり、というか驚くのも無理はないだろう。
世間では珀鉛病は「白い町」ごとこの世からなくなったとされているのだ。