第1章 終わりの始まり
私の名前を呼んでキョロキョロとあたりを見渡す。
「………そんなわけ、ないか。」
ですよね…。
ごめんなさい幸男くん。私はもうあなたには二度と会えないんです。
せめて幽霊でいられなくなる前に、一度で良いから幸男くんの部屋に行きたい!という
若干変態的な気持ちで幸男くんについていき、とうとう部屋の前。
幸男くんとはいうと、とっくにドアの向こう。
「おじゃまします。」
ドアノブをガシッとつかんでドアを開ける。
ここで私は、幽霊も物をさわれるんだ!ということを知ったと同時にえらいことをやらかしたと固まった。
だって、幸男くんあ然としてこっち見てるもん。
「ド、ドアが、か、勝手に……」
「あ…ごめんね……幸男くん……!」
聞こえない、見えてない。わかっていたけど、それを再確認してしまった。
すごく悲しいし寂しい。
「っ葵!?その声、葵だろっ!?」
ボロボロ泣いてたら聞こえてきた大声に顔を上げる。
「……幸男くん?」
「そこに……いるのか………?」
「………私が見えてるわけじゃないよね?」
手をブンブンと顔の前で振るが彼は微動だにしない。
「あ、あぁ。見えねぇ……。」
「そっか…。でも、声を聞いてもらえるだけですごく嬉しい。」
柄にもなく顔が緩む。
その私とは反対に、幸男くんの顔は真剣だった。
「何で、死んだりしたんだよ…」
唐突に、そう…聞かれた
「……言えない」
今は、こう答えるほかなかった。
「言えないんだよ…」
幸男くんの目からは涙がこぼれ落ちる。私はソッと彼の部屋を出た