第2章 【R18】赤葦京治 ~switch~
「綾瀬さん、俺の事誘ってるんですか?」
そう投げかけると、綾瀬さんは身に覚えがないのですが?といったような表情で俺を見つめてくる。
誰もいない部室。
遠くで聞こえる生徒の話し声。
白いワンピースに身を包んだ彼女とこのシチュエーションはいかにもミスマッチでそれがまた、なんか卑猥だ。
『、、、?何のこと言ってるの?』
「わかってないんですか?」
それもこれも、OBで元マネの2つ上のこの先輩は、部活に顔を出して差し入れを持ってくるのはいいけれど、いつもこんなヒラヒラふわふわとした格好をしてやってくる。
彼女が来るとみんな色めき立つのをこの人はわかっていないのか。
さっきも俺が突き指して自分でテーピングをしようと思ったら、『私がやってあげる!』なんて言って、救急箱のある部室までぐいぐい手を引っ張って連れてこられたのだ。
俺を長椅子に座らせて、その隣にまたぐようにして座って、俺の指に手際よくテープを巻いていく。
スカートから伸びる白い足、前かがみになる度に、俺の視界に入ってくる胸元。
何が一番の問題かというと、この人は、俺が一年の時から想いを寄せ続けた人だという事だ。
『テーピングしてるだけじゃん。セッターは指が命なんだから、大切にしなきゃだめなの!』
「、、、いや、それはわかってますよ。」
「、、、、あの、ワンピースで股開いて座るのどうなんですか?」
そう言ってやると、綾瀬さんは自分が無意識に椅子に足を開いて座っていた事に気付いたのか、突然顔を赤くして恥ずかしがり始める。
『ち、違う!これは、ほら、マネの時はジャージだったし!!つい、癖で!』
他人があたふたし始めると、俺は冷静になる。試合の時もそうだけど、俺はそういう性分だ。
「へー。そうですか。」
そういって、頭の上から下まで視線を移すと、さらに顔を赤くして、目線を反らしてくる。その恥じらう姿が逆効果だというのに。
綾瀬さんは、俺の発言でこのシチュエーションを意識し始めたのか、座りなおそうと立ち上がった。
乱れたワンピースの裾をなおす手つきがなんだかいやらしくしか見えなくて、俺はとっさにその手を掴んでいた。