第1章 【R18】月島蛍 ~shutout~
『へー、これが噂の大王様かー。』
そういって僕の隣でベッドに寄りかかりながら綾瀬は月バリをペラペラとめくり読んでいた。
「なに?大王様が気になるの?」
春高予選前の特集のせいか、月バリでは、気になる注目選手!とかいうミーハーな特集で、あの爽やかな笑顔をふりまく及川さんの写真が掲載されている事をふと思い出した。
『んー、気になるっていうか、確かに噂に聞く通り、イケメンだなーと思って。』
「ふーん、、、、」
「そんな事より、さっきから全然テスト勉強進んでないみたいだけど、ギリギリになってから泣きついてきたってしらないよ、僕は」
彼女が勉強そっちのけで大王様の記事を読みふけってるなんて、どう考えたって面白くない。
綾瀬と付き合い始めたのは、半年前の事だっただろうか。同じクラスで、珍しく音楽の趣味が合う女子に出会って、それからCDを貸し借りするような仲になるまでは、そう時間はかからなかった。
何度か僕の家までCDを借りに来るようになって、ついでに勉強が苦手な綾瀬に勉強を教えるようになって
『この頃週一で月島君の家にお邪魔しちゃってるね、なんか彼女みたい、なんちゃって!』
と頬を赤らめながら言われたから、
「別に、いいんじゃない、それで。」
と僕が言って、なんとなくこの関係は出来上がっていた。
『ちょっと休憩してるだけだもん。へー、及川さん身長も高いし、キャプテンだし、セッターかー!ますます凄いなー。セッターって影山君と同じだよね?』
「そう。」
及川さんが世間一般的に、人気があるのは百も承知。ついでの王様の名前まで出てくるなんて、家に帰ってまでその名前聞きたくないんですけど。
僕は向かい合って座っている綾瀬から、雑誌を取り上げると
『わぁ!!ちょっとー読んでる途中だったのに。」
と言って、口をとんがらせて拗ねた顔をする。
「ちょっと。そんなに大王様がいいわけ?」
二人の間にあるテーブルに身を乗り出して、綾瀬の顔に自分の顔を近づける。すると突然顔を真っ赤にして、ふいっと目をそらされてしまった。