第2章 目隠しの恋
「俺たちが会ったことは聞いてなかったんだね」
「あっ…。聞いてなかったです。たぶん、春樹は怪しんでなんかいないですよ」
先生の質問の意味が分かり、私は苦笑いを浮かべる。
私と先生は在学中はともかく、卒業してからは「それなり」にしかこそこそしていない。
こうして外で食事をすることもあれば、先生の車にだって何度か乗った。
もしかしたら、知らないところでは噂になっているかもしれないが私の耳には届いていない。
「春樹もお見舞いだったんですか?」
「あぁ、それが…」
私が質問したと同時に店員がドリンクを運んできた。
先生は食事を何品か注文し、私はそれが自分の好物ばかりだったので何も言わずメニュー表を閉じた。
「とりあえず乾杯しようか」
よく冷えたジョッキを片手に先生は微笑む。
松山先生はビールが大好きだ。
私はビールの美味しさがまだ分からない。
シュワシュワと炭酸が弾けるグラスを見つめながら私は先生とグラスを合わせた。