第3章 3咲目,初陣
誰も愛さないと決めたあの日から…私は家族とも一線を引くようになってしまった。愛していたから…大好きな家族を失いたくなかったから…。
でも、結局は…巨人に殺されてしまった…。私を守って…私のせいで…死んでしまった…。
私だけが生き残って…私だけが幸せになるなんて…許されないと思ってた。
けど…それは違うと…彼が教えてくれた。
彼はとても厳しい人。他人にも、自分にも。
でも同時に…とても、優しい人。
こんな私の過去を知って、すべてを受け入れてくれた、唯一の人。
だから…賭けてみることにした。
あの人なら信じられる。信じていいんだと、教えてくれた。
私に生きる希望をくれた。
彼の役に立ちたい。
彼を…愛したい。
彼に全てを捧げる。私の全てを。こんな私を愛してくれた優しい人。
愛しい彼の声がする。
「おい、イリア」
「!リヴァイさん!」
私が笑顔で駆け寄ると、微笑みを返してくれる。
彼の笑顔はとても綺麗。まるで泥の中に咲いた蓮華の花のよう。
強く、優しい微笑み。私はこの人を守りたい。そのために、もっともっと強くなる。
「今日も訓練するぞ」
「はい!よろしくお願いします!」
「音をあげたらお仕置きしてやる」
妖しく微笑む彼は何か企んでるときの顔だ。
「や、やです!」
「ならついてこい。ずっとな」
「はい!」
どこまでもついて行きます。
貴方の傍にいたいから。
入団してから1ヶ月がたった頃。
私はリヴァイさんとエルヴィン団長に呼ばれて団長室を訪れていた。
エルヴィン団長は真剣な面持ちで私を見据える。
「今回君を呼んだのは他でもない。次の壁外調査に同行してもらいたい」
「!はい、わかりました」
初めての壁外調査…つまり、わたしにとっての初陣。
ようやくだ。ようやく役に立てるんだ。
「詳しい説明はリヴァイから聞いてくれ」
「はい」
「君の活躍に期待しているよ」
そう言って微笑むエルヴィン団長。その隣で仏頂面になっているリヴァイさんとアイコンタクトをとり、2人で部屋から出ていく。