第2章 “エース”を連れ戻せ
もーお前の所為だかんなーという日向の一声で、再びざわめきが訪れる。何だかんだで皆仲が良いという事は一目で分かる。
────私もその輪の中に入りたいという気持ちが、僅かに芽生えた。
その感情に、自分自身驚愕を覚える。
男子の中に混ざりたいなんて、今までに考えた事もなかった。寧ろ避けたいという対象でしかなかったのだ。それなのに、どうしてこんな風に思ったのか。そうこう考えるている内にバス停の近くまで着いてしまう。
「あ、あのっ・・・」
「ん?どしたの瀬戸」
「私、バスなのでここで・・・」
「あれ?瀬戸チャリじゃなかったっけ?」
日向は自分の自転車の指差しながら問い掛ける。
「うん。そうだけど、今日はバスの気分だったから。じゃあ、お先に失礼します」
言葉の最後に会釈をすると、口々に挨拶が飛んでくる。
田「じゃあなー瀬戸ー!また明日ー!」
菅「暗いから気を付けろよー!!」
澤「家に帰るまで注意するんだぞ!」
西「何かあったら思い切り叫ぶんだぞー!!」
東「今日はありがとなーまた明日ー」
月「・・・・・・さよなら」
山「ばいばーい気を付けてねー!」
日「バイバーイ!!また明日なー!!」
影「じゃあな・・・」
皆の言葉に胸が温かくなるのと同時に、寂しさが胸を満たしていく。皆が歩き出しても、私はその場から動けず、皆の背が遠ざかり始めるのを見詰める事しか出来なかった。
「あ、あ、あのっ!!」