第7章 おかしな烏野高校排球部
「よりによって飛雄とはねぇ…。本当にカワイクない後輩ちゃんだよお前は」
コイツとは何かで結ばれてるのかねぇ。
及川は溜め息を吐いて我が身を嘆く。この世に人と人との縁という物が実在するならば、随分とありがた迷惑な代物だ。縁を結ぶ相手くらい選ばせて欲しいと、及川は天に苦言を呈しておいた。
「……」
“オイカワさん、すげぇ人、目指す人、でもヤな人、性格わるい。”
及川の言葉にムッとなり、影山は反論を試みてみる。しかし、思い浮かぶのは箇条書きの言葉ばかりな上に、及川と思い付いて連想する単語しか出て来なかった。
バレーにしか能力を発揮しない集中力と応用力が許容範囲外の事をしたせいで、頭がプスプスと音を立てショートする。影山はバツ悪そうに顰めっ面で派手に頭を搔きながら思う。
──もし及川さんが因縁の相手なら、自分はなんてツイてないんだろうと。
「さっ、今日のところはこの辺で帰ろっか!慣れないことしちゃって及川さんお腹空いちゃったよ~っ!」
唐突に先程の雰囲気とがらりと一転し、いつもの軽快な調子に戻る及川に、烏野のメンバーはギョっとする。
一方で青城の面々はいつもの事なのか、やれやれと首を振りながら荷物を持つ。
及川は何事もなかったように吹きなれたいつもの口笛を奏でながら、体育館扉を開けた。が、不意に「あっ」と忘れ物を思い出したかのように声を上げて振り返る。
「IH予選、楽しみだねぇ」
ゾッとする程完璧な笑みを浮かべてそう言った。凍り付く烏野を他所に、及川はまた口笛を吹いて出て行った。それに続く三人は、彼らにゆっくりと頭を下げて去っていく。
体育館の張り詰めていた空気は消え、残ったのは夢現のようなままの烏野の面々だけ。はっきりしない思考の中、彼らが確かに感じていることは一つ。
“避けられない戦いが起きようとしている。”
IH予選まで、あと────