第7章 おかしな烏野高校排球部
「はい捕まえたー。いやぁ助かったよ二人とも」
「「…」」
「あれ?怒ってる?」
「聞かなくても分かりますよね…」
「……」
月島さん、そのままソイツ殴り倒して下さい。
月島さんはジト目で“アレ”を見詰め、怒気を孕んだ声で“アレ”に返答した。ちなみに、日向が先程から黙っているのは、月島さんによりフルボッコされ地面に倒れ伏しているためである。
「はっはっはぁ。ごめんごめん。でも俺も日向くんがあんな面白い事するとは思わなかったよ」
単調な笑いを吐く“アレ”を、月島さんは更に強く睨み付ける。“アレ”は乾いた声で笑い、大して相手にしていないようだ。それが月島さんも伝わったのか、居心地悪そうに困惑する。扱い辛い相手なのだろうか。私もそれ凄い分かる。
「さて…もう観念だよね?」
“アレ”は勝ち誇った笑みで、自身の腕の中で大人しくしている私を見る。顔がうるさい。
「……もう、ここまで来たから、どうでもいい」
“アレ”に皆の前まで引き摺られてしまった。最早足掻く気力すらない。それと、身を削ってまで一発ギャグ見せてくれた日向と、被害者の月島さんに申し訳ない。
「足掻きはしないけど、離して」
「うん、いいよ」
“アレ”はあっさりと絡めていた腕を離して解放する。私はわざと鼻を鳴らして不機嫌さを表す。しかし“アレ”は笑顔を崩さない。お面被ってんのかお前は。
「あ、あの…」
スガ先輩はおずおずと“アレ”に声をかける。
「うん?何か用?」
お前がな。
私は事情知ってるが、他の皆さんからしたらとんでもない部外者だよ。スガ先輩は隣に立つ主将をちらりと見やる。主将も戸惑い気味に視線を返す。
相当動揺しているようだ。そりゃあそうだろうな。瞼を降ろし、溜め息を一つ吐く。後頭部をガシガシと掻いて口を開く。