第7章 おかしな烏野高校排球部
「ちょっと、何する気、」
「オレンジくんちょいちょい」
無視か。
(オレンジくんさ、あの子に…)
(え、ええ?!絶対無理ですよ!!)
(いけるいけるだぁいじょぶだって!)
“アレ”は日向に耳打ちをし、何か良からぬ事を仕込もうとしている。『僕は関係無いですよ』とでも言いたいが為なのか距離を置いて立っていた月島さんも、その作戦を聞く事は出来なかった。“アレ”が耳打ちを始めた瞬間、月島さんは、しまった…ととても悔しそうに呟いていた。どんまいです。
ていうかこの間もガッチリ引っ張れるってコイツ何なの何者なの。
「ようし。じゃあ作戦通りにー」
「は、はいっ!!」
はいじゃないよ日向。“アレ”は私の敵だからね。寧ろ裏切って助けて欲しかったよ私。
「余所見してる暇ないよ伊鶴ー」
「ッ!」
“アレ”の引っ張ってくる力が強まる。ああくそもうダメかもしれん。それでも最後の意地に扉を掴む手に力を込める。汗で滑りそう
になりながらも指先に力を込める。後方を振り返ると、ニマニマと唇を歪める“アレ”が佇んでいる。上着のポケットに突っ込んでいた左手を出し、ひらひらと私に手を振ってくる。必死こいて足踏ん張って堪えてる私とは違いますってか。何から何までムカツク奴だ。
こんな奴に負けてたまるかと足の指に力を込めた。すると、不意に日向が月島さんの横へと移動する。
「瀬戸!!」
「?!」
反射的に顔を横に向ける。顔の強張った日向と対峙する。月島さんは場の状況を全く理解出来ていないのか、私と日向の間に視線を往復させる。大丈夫月島さん。私も理解出来てない。
日向を注視していると、不意にすっと日向は息を吸う。